蔵元だより
南部美人inサクラメント・サンフランシスコ その2
日本酒が世界に広がるためには、海外の醸造場と醸造家のお酒のレベルが上がらなければいけないと、ずっと思っていました。そんな考えを精米機の会社で新中野工業を傘下に持つ(株)飯田の飯田社長と話した時に、飯田社長が賛同してくれて今回アメリカのカリフォルニア州サクラメントで世界初となる、海外醸造家の皆さんを対象とした本格的な醸造技術セミナーを開催してくれました。そこで、今現在の日本酒の最新の技術情報をアメリカの醸造家の皆さんに伝えるためにお話をしてきました。
集まった30名近いアメリカで今日本酒を醸している方々、そしてこれから醸そうとしている方々が集まり、まさに熱の塊のようなセミナーになりました。私以外には、外国人として初の認定杜氏である南部杜氏の京都「玉川」のフィリップハーパーさん、大分県の「豊潤」を醸す小松酒造のオーナー杜氏の小松潤平さんが話をしました。そんなことを話したら日本の醸造技術の流出になるのでは、と心配する方も多いですが、日本酒の世界には「酒屋万流」という言葉がある通り、同じような造り方をしても、蔵が違えば絶対に同じ酒は造れません。さらに、日本酒の製造の教科書はかなり古い情報が多く、最新の話はなかなか書いていないので、その差を埋める事も考えました。どうせ造るならおいしいお酒を世界中で醸してもらう事で、日本酒を飲むお客さんの底上げにつながると信じています。そのためには最新の日本の酒造りの技術や外国人が本場日本で酒を造る意味や意義、そして小さなサイズで酒を仕込む工夫など、まさに今アメリカで、世界で欲しい情報を出すことで、海外の蔵の味のレベルが上がり素晴らしい相乗効果を生むと信じています。
ワインの世界でもフランスワインだけが全てではなく、カリフォルニアやチリやアルゼンチンなど世界で高品質なワインが出来てきているからこそ、世界中にワインが広がっていきました。日本酒も世界中で高品質な酒が現地生産ならではの高くない価格で飲まれるようになり、その中からさらに高付加価値の日本酒が生まれる、まさに日本酒の世界の「オーパスワン」のような存在が生まれることで日本産の日本酒の価値も同時にあがると思います。お互いの相乗効果が生まれると信じています。
今回のセミナーに参加した海外の蔵から誰がオーパスワンになれるか、すごく楽しみです。今すぐに、ではなく未来に向けて第1歩を歩みだした今回の醸造セミナーでした。結果は5年後か、10年後か、本当に楽しみです!!私達日本の蔵元も負けないようにさらに高品質な酒造りを目指し、切磋琢磨していきたいと思います!!