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南部美人の取り組み スーパーフローズンの日本酒 誕生物語

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「その酒は、生まれたままの味を記憶している」

南部美人スーパーフローズン 冷凍酒

 

私は生酒を飲めない・・・

私は、生酒を飲めません。
そう言うと語弊があるかもしれません。正しくは、「市販されている生酒」が飲めません。
なぜなら、そのほとんどが劣化しているから。
でも「蔵で飲むしぼりたての生酒」は大好きなんです。これが世界でいちばんおいしい、これに優るものはない、と私は思っています。だからこそ、市販の劣化したものを飲むと、すごく心が痛い。それもあって、南部美人では生酒をあまり出していませんでした。

生酒は、一切火入れ(加熱処理)をしていませんから、どんなに低温で貯蔵しても必ず風味が落ちてしてしまいます。しぼりたてが100点のおいしさとすると、時間が経つにつれ、どんどんその美味しさは減点されていきます。国内ですらそうなのに、最近はニューヨークなど海外でも、生酒を提供するところが出始めてきています。もちろん、それはもっともっと劣化しています。朽ち果てているといってもいい。

ニューヨークで飲んだ、”愛ある”最悪の生酒

ニューヨークで飲んだ生酒は最悪でした。しかもそれは「南部美人」でした。
その1年前、テスト的に生酒をニューヨークに出したことがあったんです。「すぐに飲みきってね」と伝えたのですが、その1年後に私がニューヨークを再訪したら「南部美人のとっておきがあるよ」と生酒を出してきた。まさに「取って置いて」たんです。

「特別に出してもらったものだから、勿体無くて飲めなかった。久慈さんがきたときに一緒に飲もうと思って、0度の冷蔵庫で保存していました。大丈夫ですよね?」と言われましたが「いや、大丈夫じゃない」ともいえず…。飲みました。おいしくなかったです。

でも、こういうことって、往往にしてあるんです。「生酒はフレッシュでおいしい」というイメージから市場での評価は凄く高い。でも、実際に出回っている生酒は「フレッシュさ」とは乖離しちゃっている。蔵元の我々はそれが嫌で。だから有名な蔵元っていうのはそんなに生酒を出さないんです。どんなに丁寧に管理しても、必ず劣化するから。
生まれた瞬間に100点だとしたら、次の日は99点、一週間後には90点…、2週間後には70点ぐらいになっている感じです。通常より温度の低い冷蔵庫に入れておけば、その減少スピードは少し緩やかになるけれど、でも必ず劣化する。だから大半のお酒は火入れをして酵素の動きを止めます。けれどそれは手術したのと一緒で、どうしても味に傷が残り、生まれた瞬間のあの素晴らしい味と同じにはならなりません。

それがすごくもどかしいと、思っていました。
もちろん蔵に来ていただければ、しぼりたての生酒を味わってもらうことはできるけど、それができる人はすごく限られますよね。何とか、蔵で飲むような、しぼりたて100点満点の生酒を、世界中の人に味わってもらいたい。

例えるなら、酒蔵直結のホースがニューヨークやロンドン、パリ、アルゼンチン、アフリカなどの世界中に張り巡らされていて、蛇口をひねると目の前のグラスに絞ったばかりのフレッシュな生酒が注がれるイメージ。絶対ありえない話ですよね。でも、それと同じようなことが「スーパーフローズン(瞬間冷凍貯蔵)」によって実現可能になったのです。

日本酒が世界で戦うため

もともと日本酒の世界では、「常温で置いても腐らない」のが当たり前。少なくとも、昭和の時代まではそうでした。

平成になって、国税庁の「清酒の製法品質表示基準」が制定され、純米酒や純米大吟醸などの特定名称酒が出回り始めると「これらは冷蔵しておかないと品質が落ちる」ことから、冷蔵貯蔵が浸透していきます。昭和までの一級酒、二級酒の時代は「常温で腐らなければいい」という考えだったのが、平成になって「冷蔵してよい状態を保つ」、つまり、よりおいしく飲む、というところまで進化しました。

日本の物流はとても発達していますから、国内でお酒を楽しむなら「冷蔵」でも十分かもしれません。しかし世界へ流通させるとなると、そうは行きません。

南部美人は、現在世界39カ国に日本酒を輸出していますが、日本酒の輸出規模はワイン市場に比べ、まだ100分の1ぐらいしかない。それには理由があります。海外の日本酒は、まだレストランでしか飲まれていない。ワインのようにお店で購入する、というスタイルがないんです。
レストランでは冷蔵保存してくれていますが、ワインショップは基本的に常温保存。それに、ロマネ・コンティなどの高級品はワインセラーに入っていますが、温度は12、13度。日本酒の世界で、それは「冷蔵」とは言いません。

とはいえ、世界の市場でワインと渡り合うために「日本酒専用の冷蔵庫を置いてください」「すべて冷蔵で輸送してください」というのは、現実的ではありません。また、限外濾過して風味も何も取ってしまったようなお酒なら常温流通も可能ですが、私が世界に届けたいのはそういうお酒じゃない。

そもそも「冷蔵」って、具体的に温度がどのくらいかって、曖昧ですよね。零度前後なのか、5度ぐらいなのか。ワインの世界でいえば、10度以上でも「冷蔵」ですし。赤道を通ったりしたら、温度が急激に変化するかもしれない。だから「冷蔵はグレー」だと思っています。

その点「冷凍」なら「解けない温度」が必ずキープされます。だってもし、店に届いた冷凍食品が解けていたら売り物にならないですよね。冷凍のまま流通する「コールドチェーン(低温流通体系)」はすでにあるので、これを利用すれば世界中どこにも持っていけます。

しかし、冷凍保存には大きな欠点がありました。普通に凍らせたお酒(緩慢冷凍酒)は、そもそもおいしくないんです。私は「図らずも凍らせてしまった」日本酒を解凍し飲んだことがありますが、苦かったりえぐみがあったりして風味が損なわれている。それに冷凍は液体の冷凍膨張により「瓶が割れる」というリスクもある。今まで日本酒業界に「冷凍保存」という考えがなかったのは、こうした背景があったからです。

冷凍カツオの衝撃と「スーパーフローズン」

仕事で高知に行ったときのことです。食事会でいただいたカツオのタタキがプリプリと新鮮で、岩手で食べているものとは比べ物にならないおいしさでした。感激して「さすが産地ですね」と言ったら、「実はこれ、冷凍なんだよ」と。驚きました。言い方は悪いかもしれませんが、私にとって冷凍は「品質が劣るもの」というイメージ。特にお刺身は、生ものに比べて値段は安いぶん、味もそれなり、という印象を持っていました。

それなのに、今食べたカツオのタタキは、今まで食べたことがないくらいおいしかった。「これが冷凍だなんてとても信じられない」と言ったら「じゃあ、生のものと食べ比べてみますか?」と、違うカツオのタタキを出してきてくれたんです。

そりゃあ、生のほうが何倍もおいしいだろう、って思いながら食べたけど、さっきの冷凍ものと、味も見た目もほとんど変わらない。びっくりしている私に、その人が「これ、凍ってるけど、物理的に凍ってないんだよ、つまり生と変わらない冷凍なんだよ」って、なぞなぞのようなことを言うんです。そして見せてくれたのが、「凍民(とうみん)」という瞬間冷凍(スーパーフローズン)の機械でした。

リキッドフリーザー「凍眠」とは

「凍眠」には、液体急速冷凍(リキッドフリーズ)方式という技術が使われています。マイナスまで冷やし込んだアルコールに、パックした食品を漬け込んで冷凍させるのですが、200gのステーキ肉なら、ものの1、2分でカチコチに凍ります。

リキッドフリーズ方式は、空気を介する一般的な冷凍方式よりも凍る速度が圧倒的に速く、ムラなく凍結できるのが特徴。なぜなら、気体に比べ、液体の熱伝導率(熱の伝わり方)は圧倒的に大きいのです。例えば、サウナの室内は80度以上あっても入れますが、80度のお湯のお風呂には到底入れませんよね。空気と液体では、熱伝導にそのぐらい大きな差があります。

また、普通の冷凍庫で刺身や肉を凍らせると、解凍した時に「ドリップ」と言われる赤い汁が出ますよね。それは、冷凍によって物質の中にある水の分子が膨張し、細胞壁を破壊してしまうからです。当然、食材の風味も損なわれてしまう。でも瞬間で冷凍すれば、水の分子がほとんど膨らまず、細胞壁も壊れません。食品へのダメージを最小限に抑えることができ、限りなくフレッシュに近い状態で冷凍保存ができます。さっき食べたカツオのタタキが「凍ってるけど凍っていない」というのは、そういう意味だったんですね。
そんな風に説明を受けながら、私は「あれ、ちょっとまてよ?」と思いました。「お酒をこの機械で凍らせたらダメなのかな?」と。

■瞬間冷凍の仕組み テクニカン凍眠HP
https://www.technican.co.jp/product-info/tomin/#merit1

別紙1液体急速凍結機-リキッドフリーザー凍眠_株式会社テクニカン

<リキッドフリーザー凍眠説明PDF>

冷凍したお酒を飲み、鳥肌が立った

私はさっそく、自分の蔵から生酒を送ってもらいました。機械に入れた時「瓶が割れるかもしれない」と心配しましたが、大丈夫でした。冷凍膨張しないから、普通の瓶のままでも凍らせることができるんです。そしてすぐ解凍し、冷凍していないものと飲み比べてみました。

…人生の中で「鳥肌が立つ経験」っていうのはそうそうないと思いますが、その時私は本当に、全身鳥肌が立ちました。

以前飲んだ「間違って冷凍しちゃったお酒」のようなえぐみがない。冷凍特有の匂いもない。そしてなにより、酒の味が変わっていない。なにひとつ「悪くなっている」と感じないんです。むしろ、冷凍しないものよりもすっきりしている印象を持ちました。

それならば、蔵で飲む「世界で一番フレッシュでおいしいしぼりたての生酒」を瞬間冷凍(冷凍酒に)したら、どうなるんだろう? そう思った私は、はやる気持ちで高知から戻り、早速「凍眠」のデモ機を借りることにしました。そうして数ヶ月後には、しぼりたての生酒で試してみたんです。

官能検査で「変わらぬおいしさ」を立証

私は、蔵でしぼった生酒をすぐ「凍眠」で冷凍酒にし、盛岡にある「岩手県工業技術センター」に持ち込みました。ここでは、人間の感覚(視覚・聴覚・味覚・嗅覚・触覚など)を用いて製品の品質を判定する「官能検査」を受けることができます。

同じ日に同じタンクからしぼった冷蔵酒も比較対象として持っていき、味にどんな違いがあるかを本格的にテストしてもらいました。すると「酒の味は基本的に変わらない、むしろ、冷凍のほうが穏やかになった」といった評価をもらいました。冷凍特有の現象から来る「味が落ちている」と指摘した人は一人もいなかったんです。

官能検査の結果
官能検査の結果

別紙2平成30年3月24日-冷凍酒報告書(docx)

南部美人凍結酒__R1.7.2(Excel)

この結果を見て、私は「もうこれは、間違いない」と確信しました。けれど、検査してくれた先生からいくつか宿題を出されました。ひとつは、解凍方法。
「流水で急いで解凍したものと、ゆっくり解凍したものと、それぞれの味の違いも試験してみなさい」というものでした。そして、実際検査してみた結果は「解凍の速度で味は変わらない」。通常の冷凍だと、水の分子が膨張し氷の結晶に変質しますが、凍眠による冷凍では分子が変質していない。つまり、解凍の方法を問わないことが実証されました

そして、もうひとつの宿題が、長期保存による変化。「数ヶ月保存したものでも試してみる必要がある」というものです。そこで、半年間冷凍したものと、同じ期間マイナス5度の冷蔵庫で冷蔵したものを再度比較分析してみました。すると冷蔵貯蔵はイソアミルアルコールやアセトアルデヒド、酢酸エチルなどの劣化成分が増えているのに対し、冷凍貯蔵は品質が安定していることがわかりました。

別紙3南部美人凍結酒__30.12.7(PDF)

この検査結果を受けて、私は「凍眠」の導入を決意。すぐにスーパーフローズンの商品開発に着手しました。日本酒にこの技術を使ったのは、南部美人が世界で初めてです。そうして生まれたのが、蔵でしぼりたての生酒を瞬間冷凍した「フローズンビューティー」(冷凍酒)です。

日本酒の立ち位置が変わる
「エボリューションフレッシュ」

「フローズンビューティー」(冷凍酒)の最大の魅力は、蔵でしぼった瞬間で時間を止め、距離をゼロにして、世界中に届けることができるところ。また、酵素の動きを止める火入れとは違って、あくまで「一時停止」の状態なので、解凍したらまた時間が動き出します。

私は、しぼりたての生酒がいちばんうまいと思っていますが、中には少し「熟した」生酒の風味が好き、というお客様もいます。お酒の好みに正解も間違いもありませんから、生酒の熟成が好きな人は冷凍酒を解凍してそのまま数か月冷蔵庫で保存しておけば、その間に風味の変化を楽しんだり、好きな熟成度合いに育てることもできます。

国内なら、その日のうちに出荷すれば1〜2日で届くので、それほどのメリットをこの冷凍酒に感じないかもしれません。しかし蔵からの距離が遠くなればなるほど、このお酒の価値は高まります。岩手にある蔵まで来なくても、しぼりたて生酒を味わえるんですから。「リアルどこでもドア」と言ってもいいかもしれません(笑)

さらに言えば、スーパーフローズンのメリットは、日本酒だからこそ最大限に生かすことができます。なぜなら「フレッシュさ」が魅力になるから。

ワインの価値と魅力は熟成にあり「新鮮さ」ではない。
焼酎やウイスキーもそう。そもそもアルコール度数が高いから凍らない。
ビールは、泡立ちとシュワシュワした喉越しが魅力だけど、冷凍保存ではおそらくそれをキープできない。

となると、スーパーフローズンは、日本酒の「フレッシュ」という魅力を究極に引き立てる技術なんです。スーパーフローズンの導入は、世界での日本酒の立ち位置を劇的に変える「エボリューションフレッシュ」だと思います。

日本酒を「作品」として保存する

日本酒に限らず、ワインもビールもウイスキーもそうですけど、その素晴らしさは「記憶」で語られることが多いですよね。「あのとき飲んだ、ボルドーのシャトーマルゴーの何年ものは美味しかったな~」みたいに。ワインの場合は記憶プラス知識で語れる部分もあるかもしれません。しかし日本酒を「語る」のは、とても曖昧です。今年の特別純米酒が去年と比べてどうだったか、なんて、本当にわかる人はいるでしょうか。おそらく、その人個人の記憶上でしか語れません。

それは決して悪いことではありません。「あのお酒がおいしかった」と記憶していただけることは、とてもありがたいことです。一方で、個人の記憶でしか語れないことを、すごく残念だなと思うこともあります。

例えば「能登四天王」という、神様のような杜氏さんたち(*)がいるんですが、そのうち2人は亡くなられていて、その方々が醸すお酒を、もう飲むことはできません。
もちろん、保存してあるお酒はあると思いますが、熟成が進んで、おそらく「できたてのお酒の味」とは違うものになっている。
(*)「鹿野酒造」農口尚彦さん(現在は農口尚彦研究所)、「桝田酒造店」三盃幸一さん、「車多酒造」中三郎さん、「土井酒造場」波瀬正吉さんの4人。中さんと農口さんは今もご健在。

私も、彼らが絶頂期だった頃のお酒を飲んでみたかったな、と思います。能登四天王の蔵で生まれたばかりのお酒の味を、純粋に味わってみたかった。でも、タイムマシンがない限り、それは叶わない夢です。

でも今は「スーパーフローズン」で瞬間冷凍すれば「南部美人の令和元年のお酒」をその当時のまま保存できるようになる。20年後に「令和元年のお酒って、どんな味だったんだろう?」って、確かめることができるようになるわけです。

「十四代」や「新政No.6」など、時代を作ったお酒の「当初の味」も、そのまま保存することができたかもしれない。私に照らし合わせれば、私が作ったお酒を数十年後にもう一度味わうことができる。私にはまだ孫がいませんが、そのまだ見ぬ孫が大人になったときに「おじいちゃんって、こんなお酒を作っていたんだね」と飲んでもらうことができる。それって、すごくないですか? 日本酒が「商品」ではなく「作品」として保存できる時代が来る、ということです。

そういう点から見ても「スーパーフローズン」がすばらしいのは、冷凍と解凍を繰り返してもほとんど劣化しないところです。今年作った酒を冷凍酒にして数十年後に解凍して飲み、残ったお酒をまた瞬間冷凍すれば、品質を損なうことなく保存ができます。

これは、ビジネスとしても大きな可能性を秘めていると思っています。
例えば、子どもが生まれた年のお酒を「冷凍」と「冷蔵」で保存し、二十年後に飲み比べる、ということだってできます。冷凍は「生まれたときのあなた」、冷蔵は「成長したあなた」として。そういうギフトとして使われたら、すごくロマンチックですね。

冷凍のネガティブイメージを変える
究極の目標は「SDGs」

日本酒の世界で「日本酒を瞬間冷凍する」と聞いても、新しいな、ユニークだなと思っても、「なんだ、冷凍かあ」とがっかりするイメージはあまり持たないかもしれません。むしろ貯蔵温度は低ければ低いほど良いと思っています。
しかし、食人の世界において日本では「冷凍」に対して「生に劣る」「手抜き」といったネガティブな印象がある。例えば、お弁当のおかずが全部冷凍食品だったらどうでしょう? 堂々と「全部冷凍なの、すごいでしょ!」とは言いにくいし、周りも「わー、すごいね!」とはきっとなりませんよね。

私は、この国の日本人が持つ「冷凍」のそんなネガティブイメージを変えたい、と思っています。つまり冷凍への「罪悪感」を取り払いたい。いえ、私だけではありません。さまざまな業界で「冷凍」のイメージを変えようと思っている人たちがたくさんいます。

その一つが、スーパーです。お店売られているお刺身やお肉、実は7割近くが売れ残って廃棄されてしまうそうです。一部は惣菜に利用したりもするのですが、そのために調理スタッフを雇ったり、大変なコストがかかっている。冷凍すればもっと賞味期限を伸ばすことができますが「冷凍もの」ってやっぱり売れないんです。「安いけど、味もそれなり」という印象がありますよね。
そういった食品ロスの問題も「スーパーフローズン」を導入することで、だいぶ改善されます。もちろん「高くても生のお刺身がほしい」という人も、「味はそれなりでいいから、安いものを買いたい」という人もいるでしょう。けれど、第三の選択肢として「スーパーフローズン」があってもいい。

もうひとつは、添加物の問題です。コンビニやスーパーのお弁当やお惣菜には、添加物が入っていたり、味付けを濃くしていたりしますよね。それは食品の安全性を保つためのものだから仕方がないんです。でも「スーパーフローズン」を使えば、無添加でナチュラル、塩分も少なくして毎日食べても安心なものを提供することができます。

実際、青森で高齢者福祉施設を数カ所経営している会社では、利用者の食事提供に「スーパーフローズン」を導入しています。本当は、各施設に調理師を配置して、そこで作った出来立てのものを配膳できればいちばんいいかもしれません。しかしそれだと人員や人件費の確保が難しい。調理から配膳まで時間があったりすると、質の変化や食中毒などの懸念も出てくる。その点「スーパーフローズン」なら、出来立てをすぐに冷凍し、食べる直前に解凍すればいいわけです。

またレストランや居酒屋などでも「スーパーフローズン」を活用できれば、時間のあるときにまとめて作り、必要な分だけ解凍できる。食品のロスも、人員確保のリスクやコストも軽減できます。働き方改革を進める支えにだってなれる。

スーパーフローズンは、食品ロス、飢餓の救済など、世界のさまざまな課題を解決するポテンシャルを持っている。「凍眠」を開発したテクニカンの山田社長は、国連に2度招かれ、今注目されている「SDGs(持続可能な開発目標)」の推進会議で講演しています。日本の民間企業としては、極めて稀なことだそうで、それだけ、スーパーフローズンはSDGsに貢献すると認められているということでしょう。

テクニカン国連スピーチ
テクニカン国連スピーチ

テクニカン国連スピーチ(PDF)

しかし、その技術を持続可能な未来へつないでいくためには、世の中の「冷凍に対するネガティブイメージ」を変えることが必要です。日本人全員から冷凍に対する「罪悪感」を取り払わなければいけない。
だから私は蔵元として「瞬間冷凍した日本酒」のおいしさを伝えていきたい。お客様に「おいしい」と実感していただくことで、先入観を少しずつ溶かしていくことができたら、と思っています。

「世界で一番おいしいお酒は酒蔵で飲むしぼりたての生原酒」
だれもが疑うことの無い真実です。
この究極のフレッシュなお酒の時を止めて、距離をゼロにして、世界中に最高にフレッシュな蔵元のしぼりたての生酒を届けたい。
日本中で、そして世界中で「フレッシュ革命」をおこしたい。
スーパーフローズンの技術には、それを実現する力があります。
スーパーフローズンの挑戦は、今始まったばかりです。
この素晴らしい技術で、10年後、20年後は生酒が当たり前に凍結した状態で流通していて、どの家でも、どの店でも日本中、世界中、本当においしい究極のフレッシュな日本酒が当たり前に飲める時代を目指して、私達は歩みを進めていきたいと思います。

南部美人 スーパーフローズン「フローズンビューティー」純米大吟醸生原酒
新時代、令和元年誕生。

―その酒は、生まれたままの味を記憶しているー